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AMD MI300X 深掘:AI アクセラレーター戦略・売上軌跡・競争リスク 2026

日本 AI インフラ投資拡大期における AMD の競争力と供給制約

公開日 2026-05-20 · jarvisbox AI エディター

要約

  • • AMD の総売上高は 2024 Q2 の 58 億ドルから 2026 Q1 の 103 億ドルへと 76% 増加。2025 年通期売上は 346 億ドル(前年比 +34%)、アナリスト合意予測は 2026 年に 500 億ドルを見込む。
  • • MI300X(2023 年 12 月)は 192 GB HBM3・5.3 TB/s を搭載し、H100 SXM5(80 GB・3.35 TB/s)に対してメモリ容量 2.4 倍・帯域幅 1.6 倍の優位を持つ。
  • • 後継の MI350X(2025 年 6 月、TSMC 3nm)は 288 GB HBM3E・8.0 TB/s に進化。MI355X は FP4 精度で 9.2 PetaFLOPS に到達。
  • • 2025 Q2 の粗利率は隣接四半期の 50%+ から 39.8% へ急落。AMD の 10-Q 開示の輸出規制リスクと整合し、対中輸出制限による MI300X 在庫損失が推定約 8 億ドル。
  • • AMD は 2025 年 10 月に OpenAI との AI プロセッサ供給契約(6 GW)を締結。ハイパースケーラーが NVIDIA 依存を減らす複数調達戦略に AMD を組み込んだ初の大型事例。

分析方法

本分析では、StockAnalysis.com から AMD の連続 8 四半期(2024 Q2〜2026 Q1)の総売上高と粗利率を取得し、CompaniesMarketCap.com で 2022〜2025 年の年間売上高と照合した。MI300X・MI350X/MI355X の仕様は Wikipedia AMD Instinct 記事から、H100/H200 の仕様は Wikipedia Hopper マイクロアーキテクチャ記事から引用。AMD と OpenAI の供給契約は Wikipedia AMD 記事から。2026 年コンセンサス予測は StockAnalysis.com(S&P Global アナリスト 51 名)から取得。分析の重点は、Q2 2025 の粗利率異常の要因特定、TSMC CoWoS 封止の供給制約が AMD 生産量に与える構造的制限、および日本の AI インフラ投資拡大との関連性評価に置いた。

MI300X の位置づけ:メモリ容量の優位性

MI300X の設計上の核心はスケールにある。8 個の GPU チップレットが TSMC CoWoS 実装を通じて 192 GB の HBM3 統合メモリプールを共有し、5.3 TB/s の帯域幅を実現する。大規模言語モデル(LLM)の推論では、モデルの重みをメモリから計算ユニットへ継続的にストリーミングする必要があり、1 枚のカードに収まるかどうかが運用コストを左右する。MI300X の 192 GB は Llama 3(700 億パラメーター規模)の完全なモデルを 1 枚で収容できるが、H100 の 80 GB では最低 2 枚必要になる。

AI アクセラレーター仕様比較 — MI300X / H100 / H200 / MI350X / MI355X
製品 メモリ 帯域幅 FP16 TFLOPS TDP
AMD MI300X 192 GB HBM3
5.3 TB/s
1,307 750 W
NVIDIA H100 SXM5 80 GB HBM3
3.35 TB/s
990 700 W
NVIDIA H200 SXM5 141 GB HBM3e
4.8 TB/s
990 1,000 W
AMD MI350X 288 GB HBM3E
8.0 TB/s
FP4: 9,200+ 1,000 W
AMD MI355X 288 GB HBM3E
8.0 TB/s
9,200 FP4 TFLOPS 1,400 W

帯域幅バーは 8.0 TB/s を基準とする。出典:Wikipedia AMD Instinct;Wikipedia Hopper マイクロアーキテクチャ。

売上軌跡:8 四半期の AI 主導成長

AMD 四半期総売上高(2024 Q2 – 2026 Q1) $0 $4B $6B $8B $10B $5.8B Q2 2024 $6.8B Q3 2024 $7.7B Q4 2024 $7.4B Q1 2025 $7.7B Q2 2025 $9.2B Q3 2025 $10.3B Q4 2025 $10.3B Q1 2026 Q2 2025:粗利率 39.8% に急落(輸出規制在庫損失)

出典:StockAnalysis.com — AMD 四半期損益計算書、2026-05-20 取得。

2025 Q2 のオレンジバーは特別な解釈を要する。四半期売上は前期比微増だったが、粗利率が約 10 ポイント低下した。AMD の 10-Q が開示する輸出規制リスク因子と一致しており、米国 BIS が対中輸出制限を強化した結果、MI300X の中国向け在庫が不良化し約 8 億ドルの損失が発生したと推定される。Q3 2025 以降、粗利率は 51%台に回復しており、一過性イベントとして確認された。

2024 年通期、AMD のデータセンター部門は売上全体の約 49% を占める約 126 億ドルを計上。MI300X GPU 単品の年間売上は 50 億ドルを超え、AMD としては初の大型 AI アクセラレーター製品となった。

CoWoS 供給依存と日本の AI インフラ

MI300X・MI350X・MI355X のすべては TSMC の CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)先進パッケージングを必要とする。GPU チップレットと HBM メモリスタックをシリコンインターポーザ上に統合するこのプロセスが、AMD の AI GPU 出荷量を決定するもう一つのボトルネックだ。台積電 CEO の魏哲家は複数の決算説明会で「CoWoS 生産能力は極めて逼迫している」と発言。2024 年末の月産約 3.5 万ウェハから 2026 年末には 13 万ウェハへの拡大を目指しているが、需要の伸びに追いついていない状況が続く。

日本との文脈で重要なのは、TSMC の熊本工場(JASM)だ。第 1 工場(N16/N12 ファミリー)は 2024 年 2 月に開所し、第 2 工場は 2nm/N6P ベースで 2027 年稼働を目指している。ただし CoWoS 先進パッケージングの生産は現時点で台湾本社工場に集中しており、熊本工場は CoWoS の直接的な供給緩和にはつながらない。日本の AI インフラ投資が急拡大する中(さくらインターネット、富士通、NTT グループらが MI300X 系を採用)、CoWoS の逼迫は日本市場への AI GPU 供給速度にも実質的な制約を与えている。

主要リスク

市場への示唆

AMD の 8 四半期 76% 増収は、AI 設備投資のスーパーサイクルという追い風と、メモリ容量の優位による差異化の二つが重なった結果だ。2025 年 10 月の OpenAI との 6 GW 供給契約は、フロンティアモデルを扱うハイパースケーラーが AMD の ROCm ソフトウェアスタックを本番稼働レベルとして認めた重要なシグナルだ。AMD がこのソフトウェア問題を解決し続ければ、2026 年の 500 億ドルという市場予測を上回る可能性もある。

MI350X の 288 GB HBM3E は、4000 億パラメーター超の超大型モデルを 1 枚のカードに収容できる唯一の商用製品となっている。モデルサイズが今後も拡大する中、この「大容量 1 枚完結」という価値提案は 2027 年以降さらに重要性を増すと予測される。

情報源

  1. StockAnalysis.com — AMD 四半期財務データ(売上高・粗利率、2024 Q2–2026 Q1)— stockanalysis.com — 取得日 2026-05-20
  2. StockAnalysis.com — AMD アナリスト合意予測(S&P Global 51 名)— stockanalysis.com — 取得日 2026-05-20
  3. CompaniesMarketCap.com — AMD 年間売上高 2022–2025 — companiesmarketcap.com — 取得日 2026-05-20
  4. Wikipedia — AMD Instinct(MI300X・MI350X/MI355X 仕様)— en.wikipedia.org — 取得日 2026-05-20
  5. Wikipedia — Hopper マイクロアーキテクチャ(H100 SXM5・H200 仕様)— en.wikipedia.org — 取得日 2026-05-20
  6. Wikipedia — Advanced Micro Devices(AMD 2025 年売上 346 億ドル;AMD–OpenAI 供給契約)— en.wikipedia.org — 取得日 2026-05-20
  7. AMD IR — Q4 2024 決算プレスリリース(データセンター部門 38.6 億ドル;MI300X 通年 50 億ドル超)— ir.amd.com — 発行日 2025-01-28
  8. Digitimes — 見出し:「AMD の 2nm サムスン移行が TSMC の AI 優位を脅かす」(AMD's 2nm defection to Samsung dents TSMC's AI grip)— digitimes.com — 取得日 2026-05-20(有料記事、詳細未確認)